第10章:【アメリカでの就職面接対策】初めての面接で私が実践したことと突破のコツ

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芸術学部・商業芸術学部の2つの学位を取得した。さらに副専攻として美術史も修めた。次の舞台はニューヨーク。しかし、日系旅行会社で待っていた最初の仕事は、美術館ツアーの企画ではなかった。猫のチケットの発券だった。

卒業前に就職の声がかかった

個人情報の扱いが今ほど厳しくなかった時代だった。そのため、1つ目の学位を取得する前から、日系企業に就職の声をかけられていた。

候補はいくつかあった。ウィスコンシンの日系食品会社とロサンゼルスの日系証券会社。この2社のどちらかに採用すれば即正社員となる。しかし私はインターンを経験したかった。まだ、アメリカで働き続けるかどうかの決意ができていなかったからである。

ただし、インターンの場合は条件があった。勉強した学部と関係のある会社でなければならない。

LAのハイスピードのハイウェイを運転する勇気はなかった。また、ウィスコンシンに残るよりも大都会に出たい気持ちが勝った。そのため、何度も訪れたことがあり、いとこも住んでいるニューヨークを選んだ。

ニューヨークでの仕事に、確固たるあてがあったわけではない。それでも、すでに2社から声をかけられていた私には、不思議と「どうにかなる」という根拠のない自信があった。最悪、ダメだったら帰国すればいい。それほど肩の力を抜いた状態で、ニューヨークでの新生活をスタートさせた。

現地に到着すると、すぐさま日系と米系の転職エージェントへ履歴書を携えて赴き、インターンを希望している旨を伝えた。最終的に、米系エージェントの仲介で2社の旅行会社の面接を受けることになる。

まずは迅速に採用通知をくれた最初の会社に決めたのだが、ドラマはそこからだった。間髪入れずにエージェントの担当女性から電話があり、「もう1社が年俸を上げると言っている」と告げられたのだ。

一度出した返事を覆すわけにはいかない、と私は筋を通そうとした。しかし、彼女の猛烈なプッシュに抗いきれず、最終的には年収も知名度も上回る後者の旅行会社へと鞍替えしてしまった。我ながら、なんとも情けない選択だった。

余談だが、この米系エージェントとは対照的に、日系のエージェントも2社訪ねていた。担当はどちらも男性で、ランチをご馳走してくれたり、お土産を持たせてくれたりと、人当たりは良かった。しかし、私の年俸を1ドルでも上げようという気迫は、そこには感じられなかった。

アメリカ企業で働きたいという私の希望を汲む様子もなく、知っているコミュニティ内の会社を紹介するだけ、という印象だった。電話で話す様子もどこか「なあなあ」な関係で、ビジネスというよりは馴れ合いに近いものを感じた。社会に出た経験もアルバイト経験もない、ひよっこの私の目にさえ、そう映ったのである。

結局、私を後押ししたのは、猛烈な交渉力を見せたあの米系エージェントの担当女性だった。

担当したのは日本に行く旅行者だった

日系旅行会社と聞くと、日本からの観光客を案内する仕事を想像するかもしれない。しかし私の担当は違った。

主な顧客はアメリカ在住の日本人と、日本へ渡航するアメリカ人だった。つまり、アメリカから日本へ向かう人たちを担当した。

また、美術館ツアーのプランナーとして、行程の組み立てや現地との調整を行う。芸術と商業の両方を学んだ自分にとって、これ以上ないポジションだと感じた。

ウィスコンシンで美術史を学んだことが、こんなかたちで活きるとは思っていなかった。

学んだことが仕事に直結する喜びを、初めて感じた瞬間だった。

最初の仕事は「猫のチケットの発券」だった

いよいよ初日の仕事が始まった。美術館ツアーの企画を任されると思っていた。しかし上司から告げられた内容は、予想の斜め上をいくものだった。

「日本に転勤になるアメリカ人のお宅に伺って、猫のチケットを発券するために猫を見てきて。」

猫のチケット。つまり、ペットの航空券の手配だ。旅行会社では珍しくない業務らしかった。しかし当時の私には、すぐには飲み込めなかった。

猫のサイズを測り、毛色と目の色を記録した

依頼主のお宅を訪問した。日本への転勤が決まったアメリカ人家族が、愛猫を連れていくための手配だった。

航空券の発券には、ペットの詳細情報が必要になる。まず猫のサイズを測った。体長と体重を記録する。また、毛色・目の色・模様などの身体的特徴もひとつひとつ記載した。

もちろん、猫はじっとしていない。しかしなんとか測定を終え、必要事項をすべてチケットの備考欄に記録した。

お宅を後にしながら、不思議な充実感があった。美術館ツアーとは全く関係のない仕事だった。それでも「お客様の大切なものを丁寧に扱う」という旅行会社の本質が、この仕事に凝縮されていると感じた。

人生で初めての給料

インターンとはいえ、給料が出た。人生で初めての収入だった。

というのも、留学中はビザの関係でアルバイトが禁止されていたからだ。そのため、これが本当の意味での初収入となった。

金額は多くはなかった。しかし給料袋の重さは、金額以上のものを感じさせた。ニューヨークで働いている。その実感がそこにあった。

また、4年制大学を卒業していたため、同期の中では給料は一番高かった。ただ、それがニューヨークでどの程度の水準なのかは、当時は何もわからなかった。それでも、初めて自分で得た給料がうれしくて仕方がなかった。

この経験から学んだこと

日系旅行会社でのインターン期間を通じて、いくつかのことを学んだ。

  • 旅行の仕事は「人の大切なものを運ぶ」こと。荷物でも、ペットでも、思い出でも、大切なものを預かる責任がある
  • 最初の仕事は常に予想外。しかしそこに仕事の本質が隠れていることが多い
  • 語学力は武器になる。日本語と英語の両方が必要な場面で、自分の存在価値を実感した
  • 学んだことは必ず活きる。美術史の副専攻が、ニューヨークでの最初の仕事につながった

まとめ

2つの学位と美術史の副専攻を携えてニューヨークへ渡った。LAのハイウェイへの不安と、大都会への憧れ。その両方がニューヨーク行きを後押しした。

日系旅行会社で美術館ツアーのプランナーとして採用されたが、最初の仕事は猫のチケットの発券だった。しかしその経験が、旅行業の本質を教えてくれた。そして初めて手にした給料の重さは、今も忘れられない。

最高のスタートダッシュを切るための、実践的な渡航準備

私自身のニューヨークでの生活や、現地の厳しい就職面接を振り返って、今だからこそ強く確信していることがある。

それは、「アメリカに行く前に、どれだけ英語を『話す』環境に耳と口を慣れさせておけるか」が、現地での成否をすべて分けるということだ。

現地での生活が始まってから英語をどうにかしようと思っても、日々の授業や仕事、慣れない生活のセットアップに追われ、じっくり英会話の練習をする余裕などはまずない。日本にいる今のうちから、ネイティブのスピードや会話のテンポに圧倒されない「英語の基礎体力」をつけておくことこそが、最高のスタートダッシュを切るための絶対条件である。

もし、これからアメリカへの留学や渡航を控えていて、「自分の英語力で本当に通用するだろうか」と少しでも不安を感じているなら、まずはプロのカウンセリングを受けて、渡航までの具体的な準備計画を立ててみることを強く勧める。

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もちろん、留学や海外生活への備えは英語力だけにとどまらない。現地での生活の立ち上げ、そして限られた時間の中で最大の成果を出すためには、多角的な「事前の準備」が不可欠となる。

もし、これからアメリカへの留学や渡航を控えているのであれば、私のリアルな体験に基づく以下の準備記事もあわせて参考にしてほしい。

※インターン終了後の銀行への転職の経緯は第10章:NY就職:旅行会社から日系大手銀行へ転職|ビザサポートがカギだったに続きます。

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