第7.5章:大学の講義に教授が現れない!?と思ったら、まさかの容疑で『刑務所』に収監されていた話

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大学の講義の時間になった。しかし、教授が現れない。実は「逮捕」されていた。皆さんはそんな経験があるだろうか。

「そんな映画みたいな話があるわけない」と思われるかもしれない。だが、私がアメリカの大学に留学していた頃、本当にそんな前代未聞の事件が起きた。

今回は、アメリカの大学の自由でお茶目なエピソードを紹介する。そして、異文化に大笑いしたある日の思い出を振り返る。

ある日、美術史の講義に教授が現れなかった

いつも厳格な教授の、突然の不在

その日は、私の副専攻でもある「美術史」の講義がある日だった。

担当の教授は、いつも時間より前に教室に現れる。そして、熱心に講義を行う真面目な先生であった。ただし、テストの採点がとにかく厳しい。そのため、学生の間では有名な教授でもあった。

ちなみに、この教授はどうしても私の名前が発音できなかった。

初めての授業の時、教授が生徒の名前を一人ずつ呼んで出欠を取った。しかし、私の名前だけが最後まで呼ばれなかった。そのため、授業が終わった後、不思議に思って教授に確認した。すると、なんと私は「欠席」扱いになっているという。

翌週の授業の時、私は耳をダンボのように大きくした。そして、今度こそ自分の名前が呼ばれるのを待った。しかし、やはり呼ばれない。そこで、再び授業後に教授の元へ行き、事情を話した。すると、教授は少し困ったようにこう言った。

「あなたはクラスで唯一の東洋人だ。だから、どこに座っていてもすぐに気が付く。次回からは名前は呼ばない。代わりに、姿があるかどうかを目で確認して出席にする。だから、名前を呼ばれなくても気にしないでほしい。」

名前が発音できないという教授のチャーミングな弱点。そして、不器用なれど温かい配慮。これらに触れ、私は少し心が和んだのを覚えている。

そんな風に、名前は呼ばれずとも「座っていればアイコンタクトで出席になる」という、暗黙の了解ができていた教授だった。だからこそ、あの日、教壇にその姿がなかった時の心配はひとしおだったのだ。

ところが、授業開始時刻を過ぎても教授は現れない。5分、10分と時間だけが過ぎていく。

病気か、それとも事故か?教室に広がる心配の波

「あの生真面目な教授が遅刻するなんて、絶対に何かあったに違いない」

そのため、私は最悪の事態を想像した。急病で倒れてしまったのか。あるいは、大学に来る途中で事故にでも巻き込まれてしまったのか。そう考えると、心配で気が気でなかった。

判明した衝撃の事実:教授、モールの刑務所に収監される

クラスメートが教えてくれた、まさかの「容疑」

教室に不穏な空気が漂う中、ある一人のクラスメートがニヤニヤしながらこう言った。

「心配ないよ。すぐに来るよ。だから、みんなこのまま教室で席に座って待っていよう」

わけが分からず、私は彼に理由を聞いた。すると、彼がもたらした事実はさらに衝撃的なものであった。なんと教授は今、近くのショッピングモールの中にできた特設の「刑務所」に収監されているというのだ。

しかも、その「罪状」を聞いて、私は大爆笑した。容疑は、「テストの評価が厳しすぎる罪」だった。

一体、ウィスコンシンの街で何が起きていたのだろうか。

アメリカ名物チャリティ「Jail and Bail(投獄と保釈)」とは?

実はこれ、アメリカやカナダの地域コミュニティで長年愛されているイベントだった。名前を「Jail and Bail(ジェイル・アンド・ベイル/投獄と保釈)」という。ユーモアあふれるチャリティイベントである。

その仕組みは驚くほどシンプルだ。かつ、エンターテインメント性に満ちている。

  • まず、地域の著名人やビジネスリーダーが、身内から「偽の罪」で告発される(告発する人は告発料を支払う)。
  • 次に、イベント当日、ボランティアの警察官などが本当に手錠をかけて「逮捕」する。そして、街の特設の檻(刑務所)へ連行する。
  • さらに、捕まった人は、自分の財布の中からお金を出す。または、持ち合わせがない場合は檻の中から電話などで友人や同僚に「保釈金を寄付してくれ」と頼む。
  • こうして、告発料よりも高い保釈金を支払うと「釈放」される。そして、集まった「保釈金」がそのまま慈善団体への寄付金となる。

そう、我が校の美術史の教授は、日頃の「成績が厳しすぎる」という理由がきっかけだった。そのため、多くの受講生から一斉に告発料を投じられることとなった。そして目論見通り、見事に「御用」となっていたのである。

10数分後の劇的な生還と、教授の最高のジョーク

無事に「保釈金」が集まり、教室へ帰還

事情が分かってから10数分ほど経った頃だった。突然、教室のドアが勢いよく開いた。

そこに立っていたのは、美術史の教授であった。少し息を切らしている。しかし、どこか誇らしげで、でも少し照れくさそうな表情を浮かべていた。

どうやら、教授が捕まったことを他の学生や教職員たちが知ったようだ。そして、彼らが次々と「保釈金」を寄付してくれた。そのおかげで、スピード釈放されたようだ。

モールから急いで駆けつけてくれた教授の姿が見えた。その瞬間、教室からは割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こった。

「来年は別の教授を選びなさい」

教壇に立ち、乱れた上着を整えた教授は、私たちを見渡してニヤリと笑った。そして、こう言った。

「まったく酷い目に遭った。君たち、来年は別の教授を選んでくれよ」

そのお茶目なジョークに、教室は再び大爆笑となった。いつもは少し冷徹にすら見えていた教授だった。しかし、その日を境に、ぐっと温かい人柄が垣間見えるようになった。

まとめ:ユーモアで社会を良くする、アメリカの寄付文化

ただ「寄付をしてください」と真面目に呼びかけるのではない。そうではなく、誰も傷つけないユーモアで周囲を巻き込む。そして、みんなで大笑いしながら社会貢献に変えてしまうのだ。

この「Jail and Bail」のエピソードは、私がアメリカの大学生活で体験した思い出だ。その中でも、最も大好きなカルチャーショックの一つである。

厳格な教授の意外な人間味。そして、アメリカ流の粋なチャリティ精神。これらに触れられた、最高に愉快なある日の講義の思い出である。

異文化を体験してみよう

アメリカのユーモア文化を肌で感じるには、ネイティブと話すのが一番の近道だ。

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