第9章:知らないうちにストーカーの標的に – 留学中に体験した恐怖の実話

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第9章:知らないうちにストーカーの標的に – 留学中に体験した恐怖の実話

スキー合宿での出会い

スキー合宿のクラスを受講した。参加するだけでAと単位が保証される、泊まりがけの合宿だった。私はスポーツが苦手だ。そこで、この合宿型のクラスを選んだ。結果として、無事にAを得ることができた。

合宿先に着くと、他校の学生も参加していた。食後にコーヒーを飲んでいると、友人がやってきた。「別の大学に日本人留学生がいて、話したいそうだ」と言う。

そして、一人の男子学生を連れてきた。彼の大学は、私の大学から車で3〜4時間の場所にあった。私立大学の学生で、まだ1年生だという。私より3歳年下だった。

彼も、私がかつて悩んだのと同じ悩みを抱えていた。それは、英語ができないという悩みだ。彼はまだ大学の正規の学生ではなかった。大学付属の英語学校で学んでいたのだ。

「日本に帰りたい」と、彼は泣き言を言った。そこで私は、自分も同じ経験をしたことを話した。さらに、勉強の仕方や授業の選び方をアドバイスした。

良い参考書があるので送ってあげると伝え、住所を聞いた。合宿後、勉強法を書いた手紙と一緒に、不要になった参考書を送った。すると、すぐにお礼の手紙が届いた。

再会と、お礼の贈り物

春になったある日、彼が突然訪ねてきた。シカゴに買い物に行ってきたと言う。そして、参考書やアドバイスのお礼にと、何十冊もの日本の雑誌や小説を渡された。以前、読書が好きだと話したのを覚えていてくれたようだ。

日本の本は高価だ。そのため、さすがに貰いすぎだと思った。そこで、お礼にランチをごちそうして近況を聞いた。すると、私と話して気持ちが楽になったという。帰国したい気持ちも薄らいだそうだ。安堵の思いで、自分の大学に戻る彼を見送った。

少しずつ変わっていく彼の行動

数週間後、彼はまたやってきた。こちらの大学に転校したいので、その手続きの書類を取りに来たと言う。その後もちょくちょく、キャンパスで彼の姿を見かけるようになった。

その上、私の車のワイパーに手紙が挟まっていることがあった。アパートのドアの下から、手紙が差し入れられることもあった。内容自体は普通の手紙だった。

しかし一度だけ、様子が違うことがあった。「今日は自分の誕生日だから一緒に祝ってほしい」と、待ち合わせ場所と時間を指定してきたのだ。

その日は平日だった。彼の大学は休みなのだろうかと不思議に思った。こちらには授業があった。それに、今のように携帯電話で連絡を取り合える時代でもなかった。そのため、約束の場所には行かなかった。

指定された時間を過ぎて、数時間たった頃のことだ。また車のワイパーに手紙が挟んであった。「来てくれるまで夜中まで待っている」と一言だけ書いてあった。

さすがに変な人だとは思った。だが、その日は用事があった。そのため、指定された場所に行くことはなかった。

翌朝、ふと気づくとアパートのドアの下から手紙が差し入れられていた。「真夜中まで待っていたのに来てくれなくて寂しかった」という内容だった。

その後も、たびたび校内で彼にバッタリ会うことがあった。会う度に食事やお茶に誘われた。しかし、勉強で忙しい私は断ってばかりいた。

それにしても、広いキャンパスで他校の学生と会うのは偶然だろうか。待ち伏せされていたのかもしれない。今となっては分からない。

突然の呼び出し

ある日、留学アドバイザーから呼び出された。部屋に行くと、警察の人が話を聞きたがっていると言われた。秘書に、別の部屋へ案内された。中には制服を着た警察官の男女と、もう一人男性がいた。

それぞれが自己紹介をしてくれた。しかし、何が起きているのか分からなかった。動揺していた私は、相手が誰なのかもよく聞き取れなかった。なぜ警察なのか。スピード違反も駐車違反もしていない。

こういう時、映画やドラマならこう言う場面だ。「弁護士を呼んでくれ」「弁護士が来るまでは何も話さない」。そんな妄想が頭をよぎった。すっかり自分が容疑者になったような気持ちだった。

後から気がついたことがある。もし本当に容疑者であれば、会議室で話をすることはなかっただろう。問答無用で収監されていたはずだ。

「〇〇さんを知っていますか」と聞かれた。あの男子学生のことだと、すぐに分かった。交通事故にでも遭ったのだろうかと思った。往復8時間弱をかけて、彼が頻繁に私の大学まで通っていたからだ。

発覚した真実

しかし、詳細を聞いて驚いた。私が住んでいたアパートには、プールが付いていた。特に贅沢というわけではない。生徒専用のアパートでさえ、プールがついていることは珍しくなかった。

西海岸の豪邸のように、個人宅にプールがあるわけではない。ただ、一時期、新築のアパートにプールを付けるのが流行っていたらしい。プールと言っても、温泉ほどの広さだった。

夏の夕方、そのプールでエクササイズをするのが私の日課だった。その姿を、彼が隣の教会の駐車場から双眼鏡で覗いていたのだという。それを、教会の人に通報されたのだった。

いわゆるストーカー行為だ。ただ、「ストーカー」という言葉自体が社会的に認知されるのは、その数年後のことだった。

2人の関係を聞かれた。友人でもなく、知り合い程度であることを話した。スキー場で初めて出会ってからの経緯も、全て話した。

被害届を出すかと聞かれた。しかし、直接的な被害はなかったので出さないと答えた。ところが教会側は、他人の私有地に無断で立ち入った「不法侵入」として被害届を出したという。それは、後になって聞いた話だった。

友人経由の話だが、その男子学生はその後、日本へ強制送還されたそうだ。私の大学に通うために授業を休みすぎたこと。そして、この不法侵入の件が重なったためだという。

今だから思うこと

当時は、自分には何の非もないと思っていた。しかし今振り返ると、反省すべき点もある。途中で彼の気持ちの変化に気づくべきだった。そして、毅然とした態度を取るべきだった。

また、先輩として「大学を休まないように」とアドバイスすべきだったとも思う。

一方で、ストーカー行為そのものについては、当時は全く気づきようがなかった。それは、仕方のないことだったと思っている。

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