コラム:なぜ会社はそんなにTOEICにこだわるのか——満点経験者が今、感じていること

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なぜ会社はそんなにTOEICにこだわるのか——満点経験者が今、感じていること

日本の多くの会社は、TOEICのスコアが好きだ。多くの会社の応募条件に「TOEIC○点以上」との記載を見かける。受験料を会社が負担してくれたり、無料でTOEIC対策の講師を呼んでプライベートレッスンを開いてくれたり、スコアが上がると給与に反映される会社もある。私自身、30年近い金融・翻訳のキャリアの中で、そういう会社をいくつも見てきた。

ただ、ずっと引っかかっていることがある。会社が熱心に上げようとしているのは、多くの場合「TOEIC L&R」——Listening & Readingのスコアである。話す力、書く力を測る「TOEIC S&W」というテストが別に存在することは、意外と知られていない。

スコアが上がっても、話せるようになるわけではない

友人が、ある大手IT企業にTOEICの講師として派遣されていたことがある。彼女によれば、社員のスコアはどんどん上がっていくが、それで話せるようになるかというと、当然そんなことはないという。

面白いのは、社員がスコアを伸ばす動機だ。金銭的に余裕のない若い社員ほど、昇給のために熱心に勉強し、スコアを伸ばす。昇給だけでなく出世にも関わってくるため、出世したい社員も同様に熱心に取り組む。ところが、ある程度のスコアに達して昇給や出世を果たすと、その瞬間にぴたりと受講をやめてしまうのだという。

L&Rのスコアが上がるのは、聞く・読むという受動的な力が伸びた結果であって、話す・書くという能動的な力とはそもそも別物である。それなのに、なぜ多くの会社はL&Rのスコアにここまでこだわるのか、今でも疑問に思っている。

私自身のスコアの話

私は過去に、TOEICで満点を数回取ったことがある。ただ、その証明書はあいにく手元にない。パソコンにデータとしてではなく紙の証明書で保管していたため、引っ越しの際に紛失してしまったのだ。再発行を依頼したこともあるが、有効期限の3年を過ぎていたために断られた。今履歴書に書いているのは、手元に残っている直近のスコア、965点である。

満点にたどり着くまでには、ちょっとした発見があった。まだアメリカ英語の話者だけが登場していた時期に受験した際、リスニングは毎回満点だった。それなのに、トータルのスコアは900点を少し上回る程度で止まっていた。おかしい、文法のどこかを間違って覚えているとしか考えられない——そう思い、公式問題集を徹底的に繰り返し解いた。

そのうち、答えを間違える箇所に見つけ始めた。間違って覚えていたイディオムや文法は、いつも同じところだった。その間違いを一つひとつ洗い出し、すべて潰し終えたとき、初めて満点を取った。

それ以降は、3年の有効期限が切れる直前に再受験する、というのを繰り返した。試験に備えて特別に勉強したわけではない。ただ、自分の間違いを記録したノートだけを見直せば、それで十分だった。

TOEICは年々、難しくなっている

TOEICというテスト自体も、昔とは変わってきている。以前はアメリカ英語の話者しか登場しなかったが、今はイギリス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドの英語も出題される。将来的には、さらに多様な国の英語がスピーキングテストに登場するとも言われている。

今の私には、もう満点を取る自信がない

正直に書く。今の私には、もう一度満点を取る自信がない。

理由は年齢である。体力的に、長時間のテストを受け切る気力が以前ほどない。それに、TOEICは想像以上に時間との勝負でもある。

  • Part 5(短文穴埋め):1問あたり約20秒(30問を10分で解答)
  • Part 6(長文穴埋め):1問あたり約30秒(16問を8分で解答)
  • Part 7(長文読解):1問あたり約63秒(54問を57分で解答)

見直しの時間まで考えると、正確さだけでなく反射神経も必要になってくる。私は老いた。それは事実として、静かに受け止めている。

それに、大変不遜な言い方になるが、ここまでキャリアを重ねてくると、誰も私のTOEICのスコアには興味を持たない。若かった頃は、面接でスコアを聞かれたこともあった。だが、さすがにもうそういうことはない。

それでも思うこと

30年、英語と金融と翻訳の現場を渡り歩いてきて、スコアが人の英語力のすべてを語るわけではないということは、身をもって知っている。会社がスコアにこだわる本当の理由は今でもよくわからないが、恐らく目安にするテストが他にないからだと思う。私自身は、数字は実力を測れない場所で、これからも仕事を続けていくつもりである。

それでも思うこと

30年、英語と金融と翻訳の現場を渡り歩いてきて、スコアが人の英語力のすべてを語るわけではないということは、身をもって知っている。ニューヨークの銀行で為替ディーラーのアシスタントをしていた頃、英語がほとんど話せない上司が誰よりも仕事ができる、という場面を何度も見てきた(その頃の話は第15章:銀行で外貨ディーラーのアシスタントに|英語力と仕事力は別物だったに詳しく書いている)。会社がスコアにこだわる本当の理由は今でもよくわからないが、恐らく目安にするテストが他にないからだと思う。私自身は、数字は実力を測れない場所で、これからも仕事を続けていくつもりである。

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