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ニューヨークにある日系銀行で働きながら、私はずっと不思議に思っていた。ここはアメリカのはずなのに、中身は日本そのものだ、と。
帰国後に外資系銀行で働いた経験と比べると、その違いはさらに鮮明になった。今回は、日系銀行で実際に体験した3つのエピソードを正直に綴りたいと思う。
新聞を読んではいけなかった
ある朝、早めに出社した私は、買ったばかりのニューヨーク・タイムズを読んでいた。すると上司に呼ばれた。
「新聞を読むのは禁止だ」
驚いて顔を上げると、その上司は自分のデスクで日経新聞を広げていた。
「日本の銀行では、女性が自分のデスクで新聞を読むものではない。どうしても読みたいなら、自宅で読んでから出社しなさい」
頭の中がクエスチョンマークだらけになった。理由が思い浮かばなかった。上司は男性で、日経新聞を読んでいる。私は女性で、ニューヨーク・タイムズを読んではいけない。ニューヨークにある銀行でも、中身は日本そのものだった。
喫煙室でタバコを吸ってはいけなかった
同僚の女性が喫煙室でタバコを吸っていたところ、副課長に呼び出されて注意を受けた。
「喫煙室はガラス張りで、お客様の目に触れる。日本人女性の銀行員がタバコを吸っているところを見られたら、銀行の評判を落とす。吸いたければ化粧室で吸うように」
しかし化粧室でタバコを吸えば、火災報知器が作動する。警報が鳴り響き、ビル全体に「火災が発生しました」と全館放送が流れ、防火扉が閉まる。消防車が駆けつける大騒動になりかねない。化粧室には「禁煙」のサインも大きく貼り出されていた。
副課長がそれを知らないはずはない。要するに「銀行内では一切タバコを吸うな」ということだったのだろう。
ところが17時を過ぎてアメリカ人従業員が帰宅すると、多くの男性たちは当たり前のように灰皿をデスクに出し、蒸気機関車のごとく煙を吐き出していた。銀行全体が禁煙のはずなのに。
明らかな男女差別だった。しかし当時、それに声を上げる勇気のある女性はいなかった。
ドレスコードの謎な二重基準と「セクハラになるから君が言って」事件
アメリカ人の女性従業員がノースリーブのブラウスにサンダルという、明らかに規定違反の服装で出社しても、誰も何も言わなかった。一方、私たち日本人女性従業員はスーツを着ることを余儀なくされていた。
法人対応の銀行だったため、顧客に直接会う機会など皆無だったにもかかわらず、だ。
あるアメリカ人女性がタンクトップで出社した日のことだ。副課長が私のところにやってきてこう言った。
「あの女性に、服装を改めるよう注意してほしい。自分が言うとセクハラになるから」
なぜ私が…と思いながらも、仕方なく彼女に副課長のメッセージを伝えた。
「なぜ本人が直接言わないの?」
至極当然の質問だった。私も答えに窮して黙り込んでしまった。
すると彼女はそのまま副課長のところへ直談判しに行った。「タンクトップの上に何かを羽織る」ということで決着したようだった。
その後、副課長から私のところに一言あった。
「君の説得が悪い」
たまたま副課長の隣の席にいた私は、完全な巻き込まれ事故だった。
日系銀行と外資系銀行、何が違ったのか
帰国後、外資系銀行で働いた経験と比べると、その違いは歴然としていた。
外資系では女性が朝から新聞を読んでいても誰も何も言わない。服装の基準も男女で明確に異なることはなかった。意見があれば直接言う文化が根付いていた。
日系銀行のニューヨーク支店は、場所こそアメリカだったが、文化は完全に日本式だった。いや、むしろ日本の本社よりも古い体質が温存されていたかもしれない。海外に出ることで、かえって変化に取り残されていたのだ。
まとめ
新聞禁止、タバコ問題、タンクトップ事件—これらはすべて、1980〜90年代の日系銀行で実際に起きた出来事だ。
今の時代なら即アウトになるような話ばかりだが、当時はそれが「普通」だった。そしてその「普通」に疑問を持ちながらも、声を上げられなかった私たちがいた。
時代は変わった。しかし組織の文化というものは、法律よりもずっとゆっくりと変わっていく。
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【Cambly(キャンブリー)】このブログでは、1980〜90年代のニューヨーク銀行員生活のリアルを綴っています。他の記事もぜひご覧ください。



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