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はじめに
ニューヨークを観光するなら、地下鉄を使いこなしたい。24時間365日動いている。マンハッタンのほぼすべての観光スポットをカバーしている。
私が住んでいた1980〜1990年代は、車内は落書きだらけで、夜は怖くて乗れなかった。当時のニューヨークの地下鉄は、今のような観光の足ではなく、「できれば避けたいもの」だった。それが今は格段に改善されている。慣れれば、タクシーより便利で安上がりだ。当時を知る身としては、正直なところ隔世の感がある。
路線図の読み方
路線番号と色の見方
NYの地下鉄は路線が数字(1・2・3など)またはアルファベット(A・C・E・Nなど)で表されている。色分けもされているので、慣れると英語が得意でなくても使いやすい。
当時も路線番号や色分けの基本的な仕組みは今とそれほど変わっていない。しかし、駅構内の案内表示は今よりずっと不親切だった。今のように多言語表示や電光掲示板の案内があるわけでもなく、壁に貼られた古い路線図とにらめっこしながら覚えたものだ。
マンハッタン内の移動の特徴
マンハッタン内の路線は基本的に南北方向に走っている。一方で、東西の移動は地下鉄より路線バスの方が便利だ。観光で使う主要路線は以下の通り。
- 1・2・3線(赤):ウエストサイドを南北に縦断。セントラルパーク西側、タイムズスクエア、チェルシーなど
- 4・5・6線(緑):イーストサイドを南北に縦断。グランドセントラル、ミッドタウン東側、アッパーイーストサイドなど
- A・C・E線(青):ウエストサイドの急行・各停。タイムズスクエア、ワールドトレードセンター(フルトン駅)など
- N・Q・R・W線(黄):タイムズスクエア、5番街、ユニオンスクエアなど
当時、私は銀行に通勤するために毎日この路線網のお世話になっていた(通勤の実体験は「第16章:マンハッタンの通勤事情」に詳しく書いている)。南北移動が基本、という感覚は身体に染みついていて、今でも咄嗟に東西へ移動しようとして地下鉄で迷いかけることがある。
路線図を入手する方法
路線図はMTA(ニューヨーク州都市交通局)の公式サイトからPDFをダウンロードして、スマホに入れておくと便利だ。当時は駅の窓口で紙の路線図をもらい、折り目がボロボロになるまでバッグに入れて持ち歩いていた。今なら、なくす心配も擦り切れる心配もないのが何ともありがたい。
ガイドブックとWiFiがあると便利
さらに詳しい観光情報は、地球の歩き方 ニューヨーク 2026-2027などのガイドブックを1冊持っておくと心強い。地下鉄の路線図だけでなく、レストランやショッピング情報もまとまっているので、現地でも重宝する。また、現地でGoogle Mapsを使って路線を調べるには、海外用WiFiがあると安心だ。グローバルWiFiを見てみる
料金と支払い方法
2026年現在、地下鉄の1回乗車料金は3ドル(均一)だ。どこまで乗っても同じ値段というのはありがたい。
OMNYで乗るのが一番簡単
現在のNY地下鉄の主流は、OMNY(オムニー)と呼ばれるタッチ決済システムだ。改札のリーダーに以下のいずれかをタッチするだけで乗れる。
- タッチ決済対応のクレジットカード・デビットカード(Visa、Mastercard、AMEXなど)
- Apple PayまたはGoogle Payを設定したスマートフォン
- OMNYカード(駅の券売機で購入、カード代5ドル)
日本のSuicaやPasmoのような感覚で使える。そのため、旅行者にとっては最も手軽な方法だ。
当時は、トークンと呼ばれる金属製のコインを窓口で買って改札に投入していた。最初に購入した時は、1トークンが25セントだった。それが、あれよあれよという間に値上がりしていった。
この値上がりのたびに、さまざまな噂が飛び交った。「来週から値上げらしい」と聞いて、金曜日にまとめて買っておこうと思っていたら、なんと翌日にはもう値上がりしていたこともあった。その噂の出どころだった同僚は、いろいろな人から文句を言われていた。彼女の配偶者は研修医で、政治家の秘書の知り合いから情報を得たそうだ。まだ若かった私は、自分の見通しの甘さよりも、デマを流した人間を恨んだ。今考えれば、人間ができていなかったと思う。
それ以来、値上げするという噂が出たら、すぐにトークンを大量買いするようになった。あの頃は、それくらいトークンの値上げが多かった。
その後、磁気式のメトロカードに変わり、今はタッチ決済。同じ地下鉄なのに、支払い方法だけを見ても、この40年ほどで3世代分くらい進化した感覚がある。
乗り放題になる仕組み
OMNYには便利な自動乗り放題機能がある。同じ決済手段で月曜から日曜の7日間に12回乗車すると、それ以降その週は追加料金なしで乗り放題になる。1週間の滞在で毎日地下鉄を使うなら、自然と乗り放題の恩恵を受けられる仕組みだ。
また、地下鉄からバス(またはバスから地下鉄)への乗り換えは、2時間以内なら1回に限り無料になる。
乗り方のステップ
ホームを探す
地下鉄の入口は地上に小さな看板と階段がある。緑色の球形の街灯がついている入口は24時間利用可能、黄色は平日昼間のみ利用可能な目印だ。赤は出口専用なので注意しよう。
方向を確認する
ホームはアップタウン(上り・北方向)とダウンタウン(下り・南方向)に分かれていることが多い。階段を降りる前に、自分が行きたい方向のホームかどうかを確認しよう。間違えると反対方向の電車に乗ることになる。
急行と各駅停車に気をつける
同じホームに急行(エクスプレス)と各駅停車(ローカル)が来ることがある。急行は停車駅が少ないので、乗り間違えると目的地を通り過ぎてしまう。電車が来たら必ず行き先と種別を確認すること。
私は方向音痴で、渡米前も帰国後も、電車や地下鉄の乗り換えをよく間違える。信じられないかもしれないが、最寄駅の隣の駅から1駅で帰れるところを、誤って反対方向の電車に乗ったことが数え切れないほどある。その上、戻ってこようとして再度反対方向の電車の乗ってしまったことさえある。この時ばかりは、注意散漫な自分が嫌いになった。
よく人に「NYで一人暮らしをしていて大丈夫だったの?」と聞かれる。しかし、NYの地下鉄で乗り間違えたことは一度もない。何しろ、命がかかっているから間違うわけにはいかないのだ。
例えば、ハーレムを通過する急行に乗るつもりが、誤って各駅停車に乗ってしまったら?おそらく、だんだんと乗車客の身なりや様子が変わってきて、たとえ何も起こらなかったとしても、恐怖の時間を過ごすことになったに違いない。
車内でのアナウンスに注意
突然、急行が各駅停車に変更になったり、路線が変更になることがある。車内アナウンスが入るが、聞き取りにくいこともある。周りの乗客がどやどやと降り始めたら何かあったサインだ。慌てずに周囲の様子を見て、分からなければ他の乗客に聞いてみよう。
当時は今よりもさらにアナウンスが聞き取りにくく、車内放送はほぼ雑音に近かった。地元の人たちも聞き取れていないのか、みんな同じタイミングで顔を見合わせて動き出す、という光景をよく見た。周りに合わせて動く、というのは今も昔も変わらない乗客同士の暗黙のルールだと思う。
観光に使えるコラム④のルートで使う路線
で紹介したルートでは以下の路線が活躍する。
- セントラルパーク周辺 → タイムズスクエア:B・C線(59丁目駅)からタイムズスクエア駅へ
- ミッドタウン → チャイナタウン:N・Q・R・W線(タイムズスクエア駅)からキャナル駅へ
- チャイナタウン → ウォール街:4・5線(フルトン駅)またはJ・Z線(ブロードウェイ・ナッソー駅)
注意点
治安について
1980年-1990年代と比べれば格段に改善されたとはいえ、油断は禁物だ。
夜の地下鉄は安全?
私自身は19時を過ぎて地下鉄に乗車したことは一度もない。夜は避けるか、タクシーやUberを使うことをお勧めする。
また、昼間に乗車する場合も以下に注意して欲しい。
- 乗車する際は人の多い車両を選ぶ
- ホームの端に立たない(柵がないため危険)
- スマートフォンを見ながらホームを歩かない
- 見るからに観光客と分かる格好・行動は控える
私が住んでいた頃、同僚の日本人がドア付近に立っていると、駅についてドアが開いた瞬間に、ネックレスをひったくられて、そのまま逃げられてしまったそうだ。彼女はあまりの瞬間技に、相手の顔も見ておらず、ネックレスを引きちぎった腕だけしか覚えていないと話していた。それ以来、私自身もドア付近には立たないよう気をつけるようになった。ちょっとした習慣が、身を守る一番の対策なのだと思う。
今はあの頃よりずっと安全だ。とはいえ、基本的な注意は怠らないようにしたい。
日本との違い
- 時刻表がない(平日昼間は10〜15分間隔、深夜は20分間隔が目安)。
- ラッシュ時でも日本のように「詰めて乗る」文化はない。無理に押すと嫌がられる。
- ホームに落下防止の柵がない。
- 駅にトイレはほぼない。観光スポットやレストランで済ませておくこと。
日本の地下鉄に慣れていると、「時刻表がない」ことに最初は戸惑うかもしれない。しかし、慣れてしまえば「次が来たら乗る」くらいの気楽さで十分だ。当時の私も、最初の数ヶ月は時刻表を探して駅員に笑われたものだった。
まとめ
NYの地下鉄は、最初は複雑に見えるが、南北に走る路線という基本を押さえれば意外とシンプルだ。支払いはクレジットカードのタッチ決済だけで完結するので、日本から特別な準備をしなくてもすぐに使える。
地下鉄に乗りこなせると、NYの移動が一気に自由になる。ぜひ怖がらずに使ってみてほしい。落書きだらけだった車両を知る身としては、今の清潔さと便利さに、時代の流れをしみじみと感じる。
地下鉄の乗り方がわかったら、次は観光の計画を立てよう。 → 次の記事:コラム:マンハッタンを1日で回るモデルコース
地下鉄の乗り方がわかったら、次は観光の計画を立てよう。
→ 次の記事:コラム:マンハッタンを1日で回るモデルコース
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