第40章:病気が教えてくれたこと|字幕翻訳と新しい出発

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病気になり発話障害が残った。仕事を失った。しかしひとつだけ良いことがあった。

長年憧れていた映画字幕の学校に通えたことだ。


15年越しの夢

15年ほど前、映画鑑賞が趣味だった私は映画に関わる仕事がしたくて、字幕学校の無料体験に参加したことがある。しかし仕事につながるか不明だったため、業務に関連する学校ばかり優先してきた。翻訳学校、米国大学のアカウンティング、大学院のサステナビリティファイナンス、通訳学校——さまざまな資格を取得し、完璧な仕事というゴールに向かって全力で走ってきた。

しかしそのゴールが幻想だったことに、今なら気づける。


字幕学校へ

1回目の手術後1ヶ月が過ぎた頃、字幕学校に通い始めた。発話の問題や体調を考慮し、プライベートレッスンを選択し、通学とZoomを組み合わせながら月2回のペースで受講した。

その数ヶ月後に転移が見つかった際には長期休学が必要となったが、1年2ヶ月かけて全クラスを修了した。

翻訳はAIに代替されると言われて久しいが、映像翻訳には独自の壁がある。字幕には厳しい字数制限があり、話の流れを踏まえてエッセンスを言語化する必要があるため、AIにはまだ参入できない分野だ。

幸いにも、昨今は配信サービスの増加で需要も高まっている。このタイミングで字幕翻訳を学べたことは、私にとって奇跡に近い幸運だと感じている。受講後のトライアル合格を目指して、今も勉強を続けている。

こうして「目指すべき目標」があることは幸せだ。もし何もなく、ただただ療養に明け暮れる毎日だったとしたら、さぞ辛いことだろう。

実は、退職後にしか字幕の勉強はできないと半ば諦めていた。しかし、仮に退職が70歳だとして、その時に字幕を勉強する気力や体力が私に残っているだろうか。

そう考えると、今回の病気は「今、勉強しなさい」という天からの贈り物なのかもしれない。この与えられた時間を、私は大切にするつもりだ。


がん検診を受けてほしい

どれほど若く健康であっても、誰にでも病気のリスクはある。そのリスクを最小限にするためにも、健康診断やがん検診は必ず受けてほしい。

私は何の症状もないまま口腔がん検診でがんが見つかった。検診に行かなければ、舌の切除範囲は大きくなり、再建手術が必要になっていたはずだ。検診に行って何も見つからなければ、それはそれで最高の幸せだ。


それでも、明日へ

病気だけでなく、生きていれば辛く悲しい出来事を避けることはできない。自分だけが不幸の底にいるように感じる日もある。絶望のあまり生きていることすら嫌になる瞬間もある。

時間しか解決できない問題もあり、ただ時間が過ぎるのを待つしかない日もある。

しかし明日の自分は今日の自分より強くたくましいと信じて、生きていきたい。

このブログもその一歩だ。

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