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在宅のはずが、まさかの出社続き
1ヶ月の期間限定で入った派遣翻訳者の私は、慣れない環境でパワーポイントに向き合うことになった。
当初の予定では、PCを借りる初日と返却する最終日だけ出社して、あとは在宅の予定だった。しかし私がパワーポイントができないことを知って、隣の席で教えてくれると言ってくれたので、数日ほど出社することになった。長くてもその週で出社は終わると思っていた。しかし、出勤してくれる方がありがたいと言われ、今もなお出勤を続けている。
毎日席が変わる「放浪翻訳者」
所属する部署でパワーポイントに詳しい人は一人しかいないことがわかった。しかし、実際にその人の隣の席に座るどころか、毎日私の席は変わる。所属する部署から遠く離れる時もあれば、近くに席を確保してくれることもある。しかし、所詮は別の従業員の席なので、私物を机の中に入れることもできない。いかにその人の私物を動かさないようにするかと考えながら仕事をしている。帰宅する時は元通りに戻し、貸与されたPC一式と書類、それに加えて私物の入った紙袋の合計2つを部署の人に預けて帰宅する。放浪翻訳者である。
派遣翻訳者が直面した、毎朝のPC設定という試練
そのため、毎朝、自分でPCを設定しなければならない。PCは小さく、デスクトップのモニターに繋いでいる。PCにキーボード、マウス、電源を繋ぎ、そのPCとモニターを繋ぐ。小さいPCは脇にどけておいて、モニターだけを使う。設定といっても、モニターとキーボード、マウスをPCに繋ぐだけなのだが、これがなかなかできない。9時出社が定時だが、遅くとも8時20分には会社に行く。設定に時間がかかるためだ。私にはあまりにも難しいので、コネクターの部分の写真を許可ももらって撮らせてもらった。それを見ながら設定する。我ながら情けない。
今思えば、USB-Cハブが一つあれば、毎朝の接続はもっと楽だったのかもしれない。UGREEN Revodok USB-Cハブのように、モニター・キーボード・マウス・電源をまとめて挿せるタイプなら、コネクターの写真を撮って確認する手間も減らせただろう。
慣れない環境に飛び込むこと自体は、実はこれが初めてではない(第15章:銀行で外貨ディーラーのアシスタントに|英語力と仕事力は別物だったで書いたNY時代もそうだった)。
パワポの先生はAIになった
結局、忙しすぎてパワーポイントを教えてもらうことはできない。株主総会前の忙しさは私も何回も経験しているのに、すっかり忘れていた。それで私のパワポの先生はAIとなった。しかし、AIにパワポを教えてもらうのは非常に難しい。どうやって説明をしていいのかわからないのである。何度も何度も質問を変えて繰り返し聞いて、結局わからないこともある。その時こそ、人間の先生に聞く時だ。でも、先生も忙しい。あまり時間を取らせないように、質問をまとめて聞くようにしている。
納期に間に合わなかった悔しさ
パワーポイントができない分、AI講師に質問を繰り返すため、翻訳作業に時間がかかる。今日金曜日に提出しなければならなかった翻訳も、納品できなかった。あと1時間ほど残業をさせてもらえれば納期に間に合わせることができたのに、悔しい。納期を延ばすなんて、こんな屈辱はない。派遣社員に残業をさせると残業代がかかるからなのはわかっている。「残業代は申請ないので残業させてください」との言葉が喉元まで出かかったが、やめた。
株主総会を前に会社は忙しいので、私が臨時で1ヶ月間派遣されることになった割には、多くの人がお盆休みをしっかりと取っている。私には面談の時に「お盆の間もお休みが取れないけれど大丈夫ですか?」と聞いた本人が、お盆休みで数日会社にいない。
少しずつ、卒業する
気がつけば2週間以上も出勤している。私のパワポの能力も少しずつ上がってきている。しかし、AIへのプロンプトの出し方の方がもっと上手くなっているのは皮肉だ。
PCの設定もしかり、Word、Excel、PowerPoint等、アシスタントやシステム部の人に頼り切っていた自分が悪かったと反省する毎日だ。自宅のMac、Windows、iPhoneにいたるまで、この手のことは苦手だと決め切っていて、常に誰かに手伝ってもらっていた。もうそんな自分から卒業しなければならない。長い長い留年を繰り返した私が、ついに卒業を決意した。
幸い、今はAIという味方ができた。人に聞かずに、なんとか解決できることも増えた。これが今回の仕事の大きな成果の一つだと思う。
私が選ばれた理由
しかしまだ契約は半分以上残っている。派遣先にも派遣会社にも、私を選んでよかったと思ってもらいたいと努力している。
同じ部署の人に聞いた話だが、ここ数年、この時期になると同じ派遣会社に翻訳者の派遣を依頼しているという。しかし、中には出禁になった人もいるそうだ。実際に、以前派遣された翻訳者2名を会社は指名したそうだが、2人とも別の会社で勤務中で断られたそうだ。そこで、派遣会社が以前同じポジションで仕事をしていた派遣社員の中から選んでもよいかという提案をしたそうだが、別の人にしてほしいと言われ、私に白羽の矢が立ったのだ。私を選んだことを後悔していないことを祈るばかりである。
話していないこと
ところで、私は自分の発話障害のことを話していない。ほぼほぼ誰とも話すこともないので、特に困ることもない。急に英語の質問をされても、それほど長い間話すわけではないし、このような話し方をする人だと思われているのかもしれないし、そもそも忙しすぎてそんなことにかまっている暇はないのだと思う。不幸中の幸いである。


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