第37章(前編):井の中の蛙だった私が、海外で変わった|若い世代へのメッセージ

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留学するまでの私は、井の中の蛙だった。 学校と塾、習い事に明け暮れる日々。春・夏・冬休みには母の実家の東京と、父の実家の栃木で過ごす。それが私の世界のすべてだった。

いとこたちがアメリカから帰国するまで、海外に一般の日本人が住んでいることすら知らなかった。アメリカやイギリスなど主要国の知識はあっても、近隣国の韓国、台湾、香港には眼中になかった。世界は日本とアメリカをはじめとしたヨーロッパの主要国でできている—そうさえ思っていた。

🌍 認識を覆した留学生たちとの出会い

その認識が崩れたのは、大学でアジアからの留学生に出会った時だった。彼らの多くは、私のような中間階級ではない。上流階級か、さもなければ奨学金を得て来日していた。

韓国からの留学生は、除隊後に大学へ進学するケースも多かった。そのため年齢の高い人が多く、すでに家族連れもいることにも驚いた。私がいかに狭い世界しか見ていなかったか、思い知らされた瞬間だった。

実は私だけでなく、妹も留学をしている。アメリカ一辺倒だった私とは異なり、妹はアメリカに短期留学、イギリスとスペインに長期留学し、就職先はオーストラリアだった。妹には旅行業に就きたいという明確な意志があった。そしてトリリンガルの彼女はその夢を叶えた。

🗽 予定調和ではない、想定外の人生

一方、当時の私にキャリアへの野心はなかった。卒業したら帰国してお見合いをして主婦になろう—そう思っていた。

しかしアメリカでの生活が楽しすぎた。窮屈な日本に帰国したくなくなり、急遽方針転換してニューヨークで就職することにしたのだ。

父は今でも、私の婚期が遅れたのは海外で就職したからだと考えている節がある。しかし実は、母は自分が大学卒業後に就職することを許されなかった。卒業直後に結婚してすぐに私を授かったために、社会で働くことへの強い憧れを持っていたのだ。その憧れを、私と妹に託したのだと思う。

人生は、思い通りには進まない。しかし海外に出たからこそ、想定外の道が開けた。それが私の正直な実感だ。

だから私は、今の若い人たちに声を大にして伝えたい。海外へ出てほしい。可能ならできるだけ早く、できるだけ長く。

「海外に行きたいけれど、就活に不利になるかもしれない」「費用が高すぎて無理だ」—そんな声をよく聞くようになった。

私が高校卒業後にアメリカへ渡ったのは、今から数十年前のことだ。ウィスコンシン州の大学で学び、ニューヨークで銀行員として働き、帰国後は翻訳者・通訳者としてキャリアを積んだ。あの一歩がなければ、今の自分はなかった。

だから今、日本人の若者が海外へ出なくなっているというデータを見るたびに、胸が痛くなる。

日本人留学生の現状|データが示す厳しい現実

文部科学省および日本学生支援機構(JASSO)が2026年5月末に発表した最新データによると、日本の大学等が把握している日本人留学生数は9万1,054人となっている。前年度比では約2%の微増だが、過去最多だった2018年度(約11万5,000人)の水準には遠く及ばず、増加率は明らかに鈍化している。

結論から言えば、「コロナ禍の最悪期からは回復したものの、かつてのピーク時に比べると低調」というのが現状だ。

深刻な「中身の変化」|短期化が進んでいる

全体の人数は微増しているものの、中身を見ると深刻な偏りがある。 1ヶ月未満の短期留学は前年度比5.7%増(約6万人)と、全体の3分の2近くを占める。一方で1ヶ月以上の中長期留学は、すべての期間で前年度より減少している。

つまり、大学での学位取得や1年間の交換留学といった本格的な長期留学を選ぶ学生が減り、夏休みを利用した数週間の短期研修で済ませる傾向が強まっている。

さらに留学先にも変化が起きている。これまで主流だった北米(アメリカ・カナダ)は前年度比8.4%減と大きく落ち込む一方、アジア(韓国など)は7.0%増と、費用を抑えられる近隣国へのシフトが進んでいる。

なぜ若者は海外へ出なくなったのか

① 円安と物価高のダブルパンチ

最大の壁は経済的な問題だ。アメリカ留学の場合、コロナ前の2019年であれば年間費用(授業料・滞在費等)は320万〜550万円程度だった。しかし、現在は600万〜740万円以上にまで跳ね上がっている。一般的な家庭の学生にとって、欧米への長期留学は経済的に極めてハードルが高くなってしまった。

② 就活との両立の難しさ

日本の新卒一括採用のスケジュールに遅れたくないという意識から、長期留学を敬遠する学生が多い。留学中は日本の就活情報を得る機会が少なく、選考に乗り遅れやすいからだ。そのため、就活に影響の少ない「短期」を選ぶ学生が増えている。

③ 留学のメリットが見えにくい

留学しても就職で明確に優遇されるとは限らない。コストのわりに報われないと感じる学生が増えている。語学力だけでは差別化しにくく、海外経験があっても企業が即戦力として評価するとは限らない—そういった見方が広がっている。

④ 国内でも学べる環境が増えた

大学内の国際化やオンライン学習の拡大で、わざわざ海外に出る必要性が下がっているという側面もある。一方で、日本へやってくる外国人留学生は40万人を超えて過去最多を更新している。

経済的に今はまだ留学ができなくても、一度就職して資金を貯めてから留学する方法もある。それまではオンラインで英語力をつけることを強くおすすめしたい。

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→ 続きはこちら:第37章(後編)|卒業したら主婦になるつもりだった私がNYで就職した理由

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