第16章:マンハッタンの通勤事情|地下鉄内のスリ被害と残業後の社用車送迎

地下鉄で20分の通勤

56丁目のアパートからダウンタウンにある銀行までは、地下鉄でドアツードアで20分ほどだった。東京の山手線と比べると、次の電車が来るまでに時間がかかる。さらにアメリカ人は他人と身体が触れ合うことを嫌うため、乗客同士が距離を取り合う。窓から見ればまだ乗れそうな状況でも、次の電車を待つ人が多く、無駄な待ち時間が生じることも珍しくなかった。

スリ対策は必須

スリも多く、常に注意が必要だった。私自身も2度ほど被害に遭ったことがある。それ以来、カバンは肩から斜めがけにして、ファスナーで開け閉めできるデザインのものに替えた。冬はコートの下にカバンを隠した。財布の中には常時20ドルくらいしか入れていない。そして現金とカードケースは別にするのも鉄則だ。念の為に靴もスポーツシューズで通勤しており、言うまでもなく、何かあった時に逃げられるようにするためだ。当時は今よりも治安が悪かった。そして、そのシューズの中敷きの下にも20ドル札を忍ばせていた。出社してから、デスクの下のハイヒールに履き替えていた。どの女性社員のデスクの下もハイヒール売り場と化していた。

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残業後は社用車で帰宅

残業が多く、夜7時を過ぎるとタクシーで、8時を過ぎると銀行の社用車で自宅まで送り届けてもらえた。夜の地下鉄はあまりにも危険だったからだ。繁忙期はほぼ毎日社用車で帰宅していたため、ある日ドアマンに「規則違反になってしまうのですが、失礼ながら、あなたはどのようなお仕事をされている方ですか?」と尋ねられたことがある。東洋人は若く見られがちだ。加えて私は童顔で、日本にいるころから実際の年齢より若く見られることが多かった。彼の疑問はもっともだと思う。

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