第5章:アメリカ留学中に英語でシェイクスピアを読んだ話|日本から本を取り寄せた1980年代

2026.04.28

私だけの特別課題

英語のクラスで出た課題は、当時流行っていた高視聴率を誇る刑事ドラマだった。大学生なら誰でも観ているらしかった。しかし私には、ドラマを観る余裕も英語力も時間もなかった。やむを得ず教授にそう伝えると、代わりに与えられた課題はシェイクスピアの『お気に召すまま』。私一人だけの特別課題だった。

絶望した。他のみんなと同じ課題に取り組んでいたら、ノートを借りることもできる。でも今回は違う。誰かを頼ることができない。しかもシェイクスピアは現代英語ではなく古典英語だ。ただでさえ英語が不得手な私にとって、古典英語はさらに高い壁だった。

辞書を片手にした日々

図書館で借りた本を開いたが、全くわからない。町の本屋で中学生や高校生向けのやさしいバージョンを買ってみたが、やはり全くわからない。日本語訳が必要だった。

しかしAmazonなど存在しない時代だ。国際電話で日本の両親に頼み、速達のエアメールで本を送ってもらうよう頼んだ。ところが後から知ったのだが、速達扱いは日本国内のみで、アメリカに入った時点で速達扱いはされないという。また絶望した。

メールボックスをのぞく毎日

本が届くまでの間、毎日何度もメールボックスをのぞきに行った。授業の前にも、後にも。気がつけばまたのぞいている。その間にも授業はどんどん進む。辞書を片手に英語版を読みながら、ただひたすら待った。

本が届いた瞬間

ある日、メールボックスに厚みのある封筒が入っていた。両親からの荷物だ。同封の手紙も読まずに、その場で本を開いた。これでなんとかなる——そう確信した。その夜は徹夜で読み続け、朝までに読み終えた。

課題の結果はC+

結果はC+だった。決して褒められた成績ではない。しかしAmazonもない、辞書アプリもない時代に、古典英語のシェイクスピアを日本語訳と格闘しながら読み解いたあの経験は、当時の私の精一杯だった。今でもそう思っている。

英語が聞き取れないまま授業に臨んだ初日の様子は、第3章 アメリカの大学で授業が全く聞き取れない…留学初日の絶望と乗り越え方に綴っている。

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